進化する理科教育。生徒を伸ばせる教員をめざす。

はじめに

学校の先生になるのが夢! そんな人にグッドニュースです。これまで多くの教員を社会に送り出してきた皇學館大学に、2025年度から新たに中・高の理科教員をめざす課程が設置されます(申請中※)。これは三重県では2大学のみ。理科教育の面白さについて、お話を伺いました。

※文部科学省における審査の結果、予定している教職課程の開設時期が変更となる可能性があります。

SSHや探究活動にも対応できる柔軟な理科教員を育てたい。

今回インタビューに答えてくださったのは、教育学部教育学科の澤友美准教授です。

──来年度から、皇學館大学で「理科教員養成」がスタートするそうですね。
本学は、幼児教育から高等学校教育まで多くの文系教員を社会に送り出してきました。昨年度より教育学部に「数理教育コース(中高教員)」が設置され、中・高の数学教員養成が始まっています。来年度から、この「数理教育コース(中高教員)」に、中・高の理科教員養成も新たに加わる予定です。

──澤先生は、教育学部では理科教育の指導者であるとともに研究者でもあると伺っています。
小学校教員養成において、理科教育を担当しており、来年度からは中・高の理科教育も担当します。また、私の研究者としての専門分野は昆虫学を教材にした理科教育で、中でも昆虫の免疫学を研究しています。高校の生物基礎に寄与する部分が多いです。

──理科教育をとりまく環境は、どんな風に変わってきていますか。
タブレット等デジタルツールが導入されるケースが増えてきました。また、アクティブラーニングが推進され、自ら考え、テーマを設定し、仲間と議論しながら研究を行う機会も増えています。SSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されている高校では、以前から大学の研究室や他の研究機関と連携して研究を行っていましたが、最近では指定校でなくても「総合的な探究の時間」として、これらの研究機関で学ぶ機会が増えています。受け身ではなく、積極的な姿勢がより求められるようになっていると思います。

──澤先生ご自身の理科教育の授業は、どんなところが魅力だと思われますか?
教材として昆虫を扱っているところだと思います。昆虫とヒトは生態学的にも生理学的にもかけ離れた存在だと思われがちですが、共通したしくみや働きも多くあり、医学の世界で注目されている免疫分野もそのひとつです。例えば、ヒトの白血球である好中球やマクロファージは、異物を取り込み消化し、分解する食作用を行いますが、それは昆虫の白血球でも同じです。こうした研究を通じて得た知見を学校の授業に反映させているので、学生は理論的かつ実践的で最先端の研究の一部を垣間見ることができます。これは大きなメリットだと思います。

──皇學館大学だからできる、理科教育への取り組みはありますか?
本学附属校や近隣の中学校・高等学校との協力体制です。先生方から教育現場からのリアルな声をお聞かせいただき、ディスカッションしながら、どんな授業がベターなのかを学生自らが考え、プレゼンテーションします。こうしたプロセスの後で、実際に「出前授業」を実践し、さらにフィードバックも受けます。頭の中で完結してしまうのではなく、より現状に沿った授業を創造していくことができると思います。

──理科を学ぶことで、学生はどのようなスキルや知識を得ることができるでしょうか?
仮説を立て、それを検証するための実験や観察を行い、結果を分析して結論を導くことで、科学的問題解決能力や批判的思考力(クリティカルシンキング)を養うことができます。例えば「子どもには手洗いをさせよう」と言われても、菌は目に見えないので実感は湧きません。そこで、人間の手とゴキブリの体のどちらに多く菌がついているかの観察・実験を行い、結果を保育現場の先生に見せたことがあります。ゴキブリなど昆虫の表皮は菌から身を守る物質を分泌しているので、人間の手に付着した菌の方が多かったのです。こんな風にイメージと現実の違いを明らかにして問題解決を図れます。こうした能力は、日常生活でも応用でき、正しい情報を選びとることに繋がります。

──教育者として身につけるべき力についても教えてください。
専門分野の知識やスキルを持っていることはもちろん大切ですが、多くの生徒と出前授業などを通して関わり、一人ひとりの個性や能力、日々の変化について理解することのできる素養が欠かせません。理科教育では飼育を通じて観察したり、実験等で対象物を比較、分析したりする機会が豊富にあります。こうした積み重ねで小さな変化に気づく力が向上します。それは、教員となった時に、生徒のささいな変化に「どうしたの」「大丈夫かな」と気づき、原因を分析、問題を解決していくことにつながります。これは、重大な事件や事故を未然に防ぐために必要なスキルです。また、生物を扱うことで生命の尊さを再認識できます。倫理の意識は教育者に欠かせない資質です。

──理科教員になることに興味を持っている読者に、メッセージをお願いいたします。
大学で学ぶ理科は、教科書に正解が書かれている理科とは違います。幅広い視野から物事をとらえなおすことで、出前授業や探究活動で本学を訪れる高校生たちにサポートやアドバイスをする力を養うことができます。また、理科教員をめざす課程があるのは、三重県では三重大学と本学の2大学のみです。三重県では理科教員の人材が待ち望まれています。ぜひ、理科教員となって、地域の教育を盛り上げていただけたら幸いに思います。


おわりに

いかがでしたか? 教育者育成の長い歴史を持つ皇學館大学で、理科教員をめざしてみたいと思った方は、ぜひ皇學館大学をチェックしてみてください。あなたの「先生になりたい」という夢に、さらに大きく近づけそうですね。

この記事を書いた人
    【PR】Studyplus編集部
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