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ベンゼン環とは?芳香族の受験に役立つ性質を東大生が解説!【有機化学】

はじめに

有機化学の問題を解いていると必ず出てくる「ベンゼン環」。
二重結合と単結合が混ざった複雑な形をしている上に、何やらたくさんの有機物に変化するので覚えることが沢山です。

この記事では現役東大生の私が有機化学を武器に(模試で満点を取ったことも!)大学受験を乗り切った経験を活かして、芳香族の学習に困ったあなたへ受験に役立つ絶対に覚えておきたいベンゼン環や芳香族の性質についてお話します!

ベンゼン環とは?

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ベンゼンは、分子式で書くとC6H6、6つの炭素が二重結合と単結合で繋がった正六角形の形をした分子です。
この3つずつの二重結合と単結合からなる正六角形の構造を「ベンゼン環」と呼びます。

このベンゼンとベンゼン環に様々な官能基が付いてできる芳香族化合物は大学入試の化学での一大テーマになっています!

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ベンゼン環は全ての芳香族の元になる構造!

「有機化学」とは炭素骨格を持つ「有機化合物」を扱った化学の問題です。
実は有機化合物は、大きく2つの族に分けることができると知っていましたか?

それが、「脂肪族」と「芳香族」です。
脂肪族とは、メタンやエタノールなど、ベンゼン環を持たない有機化合物のことです。
一方の芳香族は、ベンゼンを代表として、フェノールやトルエンなどベンゼン環を持つ有機化合物たちです。
ベンゼン環の有無で有機化合物を二分するくらい、ベンゼン環というのは超重要な性質を持っているのです!
(ベンゼン環を持つのは芳香族であることの十分条件ですが必要条件ではありません。ナフタレンのようにベンゼン環を持たないけれど芳香族である化合物もあります。芳香族である条件は、大学で軌道論を学ぶとわかるのですが、難しいのでここでは割愛します。高校化学の範囲では、「ベンゼン環っぽい」構造を持っていることが芳香族の条件だくらいに考えていればOKです。)

ベンゼン環の水素を置換すると様々な芳香族化合物ができる

フライングでフェノールやトルエンという名前が出てきましたが、ベンゼン環の水素に他の官能基が付くと様々な芳香族化合物ができます。
これらの芳香族化合物を覚える時に、名前と構造式だけではなく、主にどんな反応をするのかということが大切です。

例えばフェノールの検出反応は塩化鉄(Ⅲ)溶液を滴下して、紫色になるかどうかを判断することになります。
ここで出て来る塩化鉄(Ⅲ)という溶液は、高校化学の範囲では≒フェノールの検出反応だと考えて構わないくらい定番の溶液です。
「この物質はこういう反応をする」という風に頭のなかで整理してあると、構造決定の問題を一読するだけで「この反応だろうな…」と検討を付けることができるのです!

高校化学で出てくる芳香族化合物のまとめ

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それでは、いよいよ大学入試に出てくる芳香族化合物について、構造式と併せて押さえておきたいポイントをご紹介します。
必要事項だけシンプルにまとめたので、定期テストや模擬試験の前にぜひ読み返してみてください!

ベンゼン

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ベンゼン環からなる化合物がベンゼンです。
有機溶媒として使われますが、毒性を持っていることでも知られています。
以前話題になった豊洲市場の地下水を調査して検出された汚染物質というのもこのベンゼンです。
また、常温で液体ですが、揮発性を持っているため気体になりやすいです。

フェノールやニトロベンゼンなど、様々な芳香族を作るのにこのベンゼンが必要ですが、入試問題の範囲ではベンゼンを作る反応というのはほぼ問われません。
与えられた化学物質の中に、ベンゼン環を含むものがあるといった場合がほとんどです。

フェノール

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フェノールは、ベンゼンの水素1つがヒドロキシ基で置換されたものです。
フェノールの特徴として、「弱酸性である」ということが挙げられます。
そのため水酸化ナトリウムなどと塩基を加えて中和反応を起こします。
特にフェノールのナトリウム塩である「ナトリウムフェノキシド」は入試に頻出です!

また、無水酢酸と反応すると、水が取れて、酢酸フェニルが発生します。
酢酸フェニルの下の図のような構造式を取ります。

フェノールの製法としてはクメン法やクロロベンゼン、ベンゼンスルホン酸から作ったナトリウムフェノキシドに強酸を加えるなどが挙げられます。
また、繰り返しになりますがフェノールの検出反応である塩化鉄(Ⅲ)を加えて紫に呈色することは必ず覚えておきたい知識です!

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安息香酸

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安息香酸はベンゼンにカルボキシル基が1つついたもので、芳香族の中で最も基本のカルボン酸と言えます。
加工食品などの成分表を見てみると、「安息香酸ナトリウム」が見つかることも多いと思います。私たちの身の回りでは、保存料や防腐剤として活用されています。

カルボン酸が持っている性質を安息香酸も持っていることになります。
酸性であることは基本中の基本ですが、アルコールと反応してエステルになるのも重要なポイントです。
あるエステルを加水分解した時に、カルボン酸側が安息香酸だったという問題もよくあります。その際は、分子式だけではなく分子量から判ることもあるので、安息香酸の分子量が122であることは覚えておくと役立ちます!

安息香酸の生成方法もぜひ覚えておきたいポイントです。
酸化剤を使ってトルエンを酸化することによって安息香酸が作れます!

サリチル酸

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サリチル酸はベンゼン環のo位にヒドロキシ基とカルボキシル基が付いたものです。
その構造式から判る通り、サリチル酸はフェノールとカルボン酸の両方の性質を持つ芳香族化合物になります。

そのため、様々な反応を起こします。
代表的なものが、
「ヒドロキシ基が無水酢酸と反応してアセチルサリチル酸C6H4(OCOCH3)(COOH)を生成する」反応と
「カルボキシル基がエタノールと反応してサリチル酸メチルC6H4(OH)(COCH3)を生成する」反応です。


この2つの反応は、出来上がる物質が何となく似ていますし、混同しやすいです。
これを整理するために思い出してほしいのが、フェノールと安息香酸がそれぞれ何と反応するのかということです。
フェノールは無水酢酸と反応して酢酸フェニルを生成し、カルボン酸である安息香酸はエタノールとエステル結合を作れるのでした。
ですから、無水酢酸と反応するのはヒドロキシ基、エタノールと反応するのはカルボキシル基になります。

ちなみに、この2つの芳香族化合物の名前を混同してしまいやすい人は、「サリチル酸メチル」がどっちだったかを確実に覚えてしまうのがオススメです。
構造式が複雑なので意識があんまり行かないのですが、「サリチル酸メチル」という名前は実はエステルの命名法に則った名前です。
サリチル酸+エタノールでできるエステルですから、その名前は当然サリチル酸メチルになるというわけです!
サリチル酸メチルとアセチルサリチル酸の名前で迷ったら、サリチル酸メチルから確実に判断してしまいましょう!

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実は二重結合ではない?ベンゼン環の真の構造式とは?

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ベンゼン環の構造式ですが、次のような形で習っている人が多いと思います。

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かく言う私もこの書き方で習っていたのですが、ずっと何となく疑問を持ちながら使っていました。
「右隣の炭素と左隣の炭素のどちらと二重結合するのかってどうやって決まってるんだろう?」

これは不思議な問題です。ベンゼン環は6つの炭素から出来ている正六角形なので、ある炭素から見た隣の炭素に差はありません。
それでも構造式によるとどちらかが二重結合でどちらかが単結合なのです。
考え始めると、「そもそも二重結合と単結合が混ざってるなら結合の長さが違って正六角形じゃないんじゃないか?」とか、「二重結合なら簡単に付加反応が起きてもいいのにどうしてベンゼン環は安定してるんだ?」新たな疑問も出てきてしまいます。

最初にベンゼンの構造式を提唱したケクレという化学者も、この問題については頭を抱えていたようです。(余談ですが上の構造式は「ケクレ構造」と呼びます。)
ケクレの考察はこうです。
「ベンゼン環は二重結合と単結合が常に入れ替わっていて、その2つの構造式の真ん中の性質を持っている」

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この様に2つの構造式が常に入れ替わっている(共鳴といいます)からその間の性質を持つ。
だからベンゼン環は正六角形だし付加反応を受けたりしない、という説明ですね。

私は最初学習した時、この説明でケクレ環を完全に受け入れてしまいました。
しかし、実はこのケクレ環以上にベンゼンの性質を表せているとも言える構造式の書き方が有ったのです。

正六角形の真ん中に○!ロビンソン式ベンゼン環

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それが、正六角形の真ん中に○を書くことで、ベンゼン環を表すという構造式の表記方法です。
これも提唱者の名前を取ってロビンソン式と呼ばれます。
この書き方であれば、ベンゼン環の炭素間の6つの共有結合が全て同じ性質を持っていることが一目瞭然でわかります。

ただ、この構造式にも1つ欠点があります。
それは、「高校の教科書ではこの書き方が採用されていない」ということです。
大学で化学結合論についての授業を受けると、早い段階でこの真ん中に丸を書くロビンソン式構造式のほうがベンゼン環の性質をよりよく表すことが出来ていることは学ぶのですが、高校の教科書に無い以上この表記をすると減点されてしまっても"文句は言えません"。
例外的に、間違いなく減点されないと確信を持ってロビンソン式を使える時があります。
それは、構造式の記入例がロビンソン式で書かれていたときです。
その場合は安心してこちらを使いましょう。

私は、「自分でノートを取ったり問題集を解くときはロビンソン式を使う、入試本番や模擬試験、加えて過去問を解く時は記入例に従う」というようにルールを決めてベンゼン環を書いていました!

センター試験

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最後に、芳香族化合物がセンター試験ではどんな風に、どんなレベルで問われているのか実際の過去問を見てみたいと思います!

平成27年度センター試験追試 化学第4問問4

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センター化学ではこの様に、たった1問で6つの反応に関する知識を問われることもあるのです!(これは追試なので、本試験と比べると若干難しいのは否めませんが…)
誤っている反応は1つだけなので、6つの反応を見ていって「これはおかしい」と思えるものを探していけばいいですね。

1つずつ当たっていくと、⑥でトルエンに酸化剤である過マンガン酸カリウムを加えていますね。
トルエンを酸化するのは安息香酸の生成方法だったので、これでフェノールができると書かれた④が間違いだとわかります!

ちなみに②、③、④はそのままフェノールの製法の反応ですから、覚えておくとより良いですね。
④の、塩化ベンゼンジアゾニウムはジアゾカップリングに使う物質で、これは氷冷しながら行わないといけないです。
しかし、逆に冷まさないで水を加えることで塩化ベンゼンジアゾニウムの不安定性を活かしてフェノールを生成することもできるのです!

最後に

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ベンゼン環に関する話から、高校化学の重要単元、芳香族化合物について重要なポイントを紹介しました!
有機化学の選択問題を解くにも、構造決定問題を解くにも、何より正しく的確に知識を整理できているかが重要です。
この記事を読みざっくりと芳香族で必要な知識を把握し、参考書にあるようなより詳細な知識を補充しながら問題をガンガン解いていきましょう!

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この記事を書いた人
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現役で東京大学理科2類に合格しました。いまは教養学部で生命科学を専攻しています。 得意科目は数学と化学、物理で、理系科目を中心に執筆していますので参考にしていただけると嬉しいです。 最近クロスバイクにハマりました。

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